|

限られた時間内に論語の大筋を語ると云うのは至難の技であります。そこで私は皆さんがこれから論語を学ばれる際に、遠回りをしなくともよいように、又せっかくのチャンスが空振りに終らないように、学びのポイントを二つ程述べさせてもらいます。今日のメインテーマはこのことになろうかと思います。

儒教で徳と申しますと、まず頭に浮かぶのは「仁・義・礼・知・信」の五徳でありましょう。この五徳(五常とも云う)は、孔子が直接述べたものではありません。先ほども出ましたが、前漢の董仲舒がまとめたものであります。亦、孟子の頃は「仁・義・礼・知」の四徳端でありました。子思は「知・仁・勇」の三達徳。儒教の教えとは、端的に云えば、この五徳の実践にあります。「仁」とは人を思いやる心・「義」とは正義を貫く心・「礼」とは礼を尽くす心・「知」とは知恵を磨く心・「信」とは人を信じる心でありまして、これを実践せよ!と云うのが儒教であります。

 

徳にはこの他に「孝」・「忠」・「恵」というものもありますが、そもそもそれらを包括する「徳」と云うのは一体何でしょうか?
広辞苑を引いてみますと・・・・・、

(1) 心に養い身に得たところ。人道を悟って行為に表わすこと。
(2) 道徳的に善い行為をするような性格の習慣。
(3) 生来有する性質、天性、品性。
(4) 人を感化し敬服させる力。 |
|
・・・・等など、どうもピンと来ません。徳という言葉は頻繁に使われているけれども「徳とは何ですか?」と問われてスカツと、一発で答えられる人は殆どいない、ということでしょう。私もコリャイカン!と思いまして、アレコレ書物をひっくり返してみましたがどうもピンと来るものがない。漢和辞典を引いてもスカツとした説明がない。これは困ったことだと思っておりましたが、ある時フト、漢字は象形文字であるから、文字の一つひとつは元来現象や形態を象ったものである筈だ!ということに気がついた。ならば、文字の由来を調べてみれば何か手掛かりが得られるんじやなかろうかと考えまして、もう一度漢和辞典を引いてみましたら、なんと、そこにちやんとあるではないですか、徳の原字は「悳」であると!!

「悳」=直+心、つまり「生まれたままの素直な心で生きること」。これが徳の本来の意味であった訳です。勿論、漢和辞典にはこのような説明は載っておりません。私の推測です。時代が移り変わりまして、次第に世の中が複雑になって参りますと「素直な心」だけでは追いつかなくなりまして、「心で思っているだけではダメだ!実践行為が伴わなくては!」となった。そこで行動を表わす「彳」(テキ)が加わって「彳悳」なる文字となるがどうも縦に長すぎておさまりが悪い。そこで・・・・・・



となった。

・・・漢字には面白いところがありまして、おさまりの悪い字は倒したり、横に持って来たりする習慣がある。

・・・例えば。想は「相+心」ですが、

 となったりいろいろあります。

となったり

 となったりいろいろあります。

・・・徳という文字もおそらくそんな所ではなかろうかと思った訳です。これで徳の意味がスッキリ致しました。つまり徳とは「素直な心で素直に生きよ!!」「真直ぐな心で真直ぐに生よ!!」ということであります。「曲がった心でヒネクレテ生きるな!」ということであります。
その徳を具体的に言うとどうなるか?

 

・・・と云う五つの実践徳目、即ち「五徳」になる訳です。

|